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井上光太郎「Retrospective Exhibition 2002-2015 反射煙」
 
 
 

井上光太郎「Retrospective Exhibition 2002-2015 反射煙」

2015年6月15日(月)~6月27日(土)

10:00~17:00 / 休館日:日曜日

 

本展では、井上光太郎(1982年生まれ)がおよそ13年の間に描いた絵画が展示される。13年間とはすなわち、井上が大阪美術専門学校芸術研究科絵画コースに入学した2002年4月から現在に至るまでの期間である。この間井上になにがあったか? 住居の変遷を見れば、鳥取で生まれ、奈良で育った井上は、この間、大阪、西宮、再度大阪と居を移し、2009年初夏以降は東京で生活しながら制作と発表を行っている。作品変遷の原因を外的環境だけに求めることはできないが、井上の作品は環境と無関係ではない――どころか、多いに関係がある。
当初井上のモチーフには、道頓堀やタクシー、自動販売機といった身近な風景、さらには折り込み広告やエアコンなど、とかく生活と密着したものが見出されていた。のちに、西宮へ越してからの井上が発見したのが家である。井上は自宅近くの高級住宅地に建つ住宅――特に夜中のその光景に惹かれ、写真を撮り、制作を行った。2005年から2011年頃にかけて描かれたそれらの一群は、井上の画歴の中でとりわけ代表的なものとなっている。ただこう書くと、井上は生活に密着するものをモチーフに描いてきたと思われてしまうかもしれない。それは一面では正しいものの、井上の作品の全体を見誤るおそれがある。

光だ。身近な環境からさまざまにモチーフを見出しながらも井上が描いてきたのはその多くが暗がりであり、その中での発光ではなかったか。東京に越してしばらく経った2011年以降、モチーフは家から人物へと大きく移行しているが、表情の描かれない多くの人物はさながら、顔がそのまま光源になっているかのように私には見える。
なぜ光なのか――井上は、受動的に出会わされてしまう、「次の瞬間何が起こってもおかしくないような世界」を描くことが自らの制作であると語っている。それは彼がこれまで、受動的に出会わされてきた世界の断片に、実際は次の瞬間なにも起こらなかったにせよ、光のようなものを見出してきたからではないか。なにか光っているものがそこにある。井上はそれを見つけ、私たちにそっと見せ、「ありえるかもしれない別の世界」へと私たちを連れていく。近年、井上が描いている特定の場所や人物に依拠しない作品こそが、「そこ」であり、その場所の住人ではないか。今回のいわば回顧的な個展で私たちが見ることになるのは、そうしてこちらとあちらが、光と闇が、今まさに混ざろうとする瞬間の現場にほかならない。

小金沢智(日本近現代美術史)


■イベント
トークイベント:2015年6月20日14:00-15:00
レセプションパーティー:2015年6月20日15:00-17:00

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